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IPBESビジネスと生物多様性アセスメントのまとめ
10の主要メッセージと資金の流れ

田植えのあとの水田と山並み、青空
自然に直接の悪影響を与える資金(2023年)7.3兆ドル公的・民間の合計
保全・持続可能な利用に向かう資金(2023年)約2,200億ドル公的・民間の合計
示された具体的な行動100超政府・金融・企業・市民社会などに向けて

企業と生物多様性について、IPBESは何をまとめたのか

IPBES(生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム)のビジネスと生物多様性アセスメントは、2026年2月に政策決定者向け要約が承認されました。すべての企業は生物多様性に依存し、影響を与えており、前向きな変化の担い手になれるとしています(KM1)。一方で、いまの条件のもとでは企業にとって利益になることが生物多様性の損失につながりやすく、政策・経済・価値観・技術・能力の5つの面で行動を後押しする環境をつくることが必要だとしています(KM10)。

このページは、NPO法人唐津Farm&Foodが、ビジネスと生物多様性アセスメントの政策決定者向け要約(SPM)の10の主要メッセージ、資金の流れ、行動の枠組み、影響と依存の測り方を日本語で整理したものです。評価の言葉は付けず、要約に書かれていることだけを記しています。日本語は英語の最終版からの当法人訳です。出典はすべて下の出典台帳でたどれます。

ビジネスと生物多様性アセスメントとは

環境省の訳では「生物多様性及び自然の寄与に係るビジネスの影響と依存度に関する方法論に関する評価(ビジネスと生物多様性アセスメント)」です。政策決定者向け要約は、2026年2月3日から8日に英国マンチェスターで開かれたIPBES第12回総会で承認されました。約80名の執筆者と43名の寄稿者(35か国)が、5,000を超える文献をもとにまとめています。この種の評価としては初めてのものです。

要約の序文は、企業に生物多様性への影響を測り、報告し、減らすことを求める昆明・モントリオール生物多様性枠組のターゲット15の実施に役立つとしています。英語の最終版は2026年6月16日にZenodoで公開されました(DOI 10.5281/zenodo.20714890)。このページの数字はこの最終版で確認しています。

番号主要メッセージ(当法人訳)
KM1すべての企業は生物多様性に依存し、影響を与えており、前向きな変化の担い手になれる
KM2企業が活動する現在の外部条件は、公正で持続可能な未来の実現と必ずしも両立せず、システミックリスクを持続させている
KM3協働と、集団および個々の行動が、企業が公正で持続可能な未来に貢献できる環境をつくるために欠かせない
KM4すべての企業には、自らの影響と依存に対処する責任がある
KM5影響と依存を測る方法・知識・データはすでにあり、直接の事業でもバリューチェーンでも、意思決定と行動にさらに役立てられる
KM6影響と依存を測り管理するには、業種・意思決定の階層・目的ごとに異なる方法が必要
KM7適切な方法は、カバー範囲・正確さ・反応性をもとに選ぶことができる
KM8科学と、先住民・地域の知識、方法、実践に適切に関わることで、企業は影響と依存をよりよく測り管理できる
KM9既存の知識基盤は、知識とその適用にある重要なギャップを埋めて強化する必要がある
KM10行動を後押しする環境をつくれば、企業・生物多様性・社会にとって有益な、公正で持続可能な未来に向けた行動を促せる
政策決定者向け要約の10の主要メッセージ(Key Messages)の見出し。日本語は当法人訳。出典:IPBES (2026) ビジネスと生物多様性アセスメント 政策決定者向け要約 最終版

10の主要メッセージ

10の主要メッセージは、企業と生物多様性の関係(KM1・KM2)、行動(KM3・KM4)、影響と依存の測り方(KM5〜KM9)、行動を後押しする環境(KM10)の順に並んでいます。KM4は、個々の企業がどこまで責任を負うかは社会が決めることで、その判断には影響と依存の大きさが手がかりになるとしています。また、グリーンウォッシュを避けるには、影響と依存の理解にもとづく透明で信頼できる戦略と、検証できる生物多様性の成果を示すことが欠かせないとしています。

民間の資金(影響の大きい業種への投資)4.9兆ドル
環境に有害な公的補助金2.4兆ドル
保全・持続可能な利用に向かう資金約2,200億ドル
2023年の公的・民間の資金の流れ。上の2つの合計7.3兆ドルが、自然に直接の悪影響を与える資金。横棒の長さは4.9兆ドルを100%とした比。出典:IPBES (2026) 政策決定者向け要約 最終版、KM2

お金の流れ:7.3兆ドルと約2,200億ドル

KM2によると、2023年に自然に直接の悪影響を与える公的・民間の資金は7.3兆ドルと推計されています。そのうち民間の資金が約3分の2の4.9兆ドル、環境に有害な公的補助金が2.4兆ドルです。これに対し、生物多様性の保全と持続可能な利用に貢献する活動に向かった資金は約2,200億ドルでした。要約は、これらの数字が、資金の流れを生物多様性の成果に合わせる機会と必要性の両方を示しているとしています。

KM1は、1820年から2022年に世界経済が1.18兆ドルから130.11兆ドル(2011年基準のドル)に成長し、企業がその中心的な役割を果たしたとしています。その一方で、自然を勘定に入れてこなかったことが環境の劣化を招き、測定された自然の寄与18分類のうち14分類が減っているとしています。

5つの要素要約での言い方
政策・法制度政策、法、規制の枠組み
経済・金融経済と金融のしくみ
価値観・規範社会の価値観、規範、文化
技術・データ技術とデータ
能力・知識能力と知識
4つの主体含まれるもの(要約の定義)
政府各国の政府
金融関係者中央銀行、金融規制・監督当局、国際金融機関、基準設定機関など
企業・金融機関企業のほか、融資・保険・投資を提供する銀行、保険会社、アセットオーナー・運用会社、公的開発銀行、投資ファンドなど
その他の主体市民社会、先住民・地域社会、消費者、NGO、国際機関、学術界
行動を後押しする環境の5つの要素と、それをつくる4つの主体。主体の定義は要約の脚注9・10による。出典:IPBES (2026) 政策決定者向け要約 最終版、図SPM.2・KM3

4つの主体と5つの要素

図SPM.2は、企業の活動が生物多様性にもたらす結果が、政策・法制度、経済・金融、価値観・規範、技術・データ、能力・知識の5つの要素に左右されることを示しています。いまの条件は企業の前向きな行動を妨げ、悪影響のある行動をむしろ促すことも多いとしています。政府、金融関係者、企業・金融機関、その他の主体(先住民・地域社会や市民社会など)の4つの主体が、協働して、また個々に動くことで、行動を妨げる壁を越えられるとしています(KM3)。

要約は、この4つの主体と5つの要素ごとに具体的な行動を一覧にしています(表SPM.1)。企業が自らの事業所・バリューチェーン・企業全体・ポートフォリオの4つの階層でとれる行動の例もあります(表SPM.2)。このページでは一覧の全項目は扱っていません。

方向主な方法向いている意思決定の階層特徴
ボトムアップ位置に基づく観測、参加型マッピング・モニタリング、それらのデータにもとづく空間分析事業所(operations)精度が高く、カバー範囲は狭い。現場の行動による変化を示せる
トップダウンライフサイクル手法、マクロ環境経済モデルポートフォリオ・企業・バリューチェーンカバー範囲が広く、精度は低い。候補の洗い出しや比較に向くが、個別の行動による変化は追いにくい
影響と依存を測る方法の2つの方向。出典:IPBES (2026) 政策決定者向け要約 最終版、KM6、脚注12・13、表SPM.3

影響と依存の測り方

KM5は、影響と依存を測る方法・知識・データはすでにあり、一部の企業は使っているとしています。ただし、影響を評価する方法は依存を評価する方法より進んでおり、方法の利用は業種や地域によって少なく、ばらつきがあります。KM6は、すべての意思決定に合う一つの方法はないとしています。事業所の判断には現場のデータを積み上げるボトムアップの方法が、ポートフォリオ・企業・バリューチェーンの判断には広い範囲を推計するトップダウンの方法が向いています。

KM7は、方法が目的に合っているかを、カバー範囲(coverage)、正確さ(accuracy)、反応性(responsiveness)の3つで判断できるとしています。反応性は、企業の行動による変化を見分けられるかどうかです。いまある方法がすべての用途でこの3つを満たすわけではありませんが、限界を理解したうえで使えば行動に役立つ情報が得られるとしています。方法によって必要な専門知識・資源・費用が異なり、中小企業にはとくに課題になるとしたうえで、使い始めて少しずつ能力を高めていけるとしています。

KM9は、知識とその適用のギャップとして、企業に関係するデータ、根拠の網羅性、方法の適用可能性、データの入手しやすさと透明性、方法の普及の5つを挙げています。

ほかのIPBES評価とのつながり

IPBESネクサス評価のまとめも、生物多様性などに損失を与える活動に年7兆ドルが投資されているとしています。2つは別の評価で、数字の年や範囲の説明も同じではないため、このページでは足し合わせたり比べたりしていません。

よくあるご質問(FAQ)

Q1. IPBESのビジネスと生物多様性アセスメントとは何ですか?

企業が生物多様性と自然の寄与にどう影響し、どう依存しているかを測る方法を評価した、IPBESの方法論評価です。環境省の訳では「生物多様性及び自然の寄与に係るビジネスの影響と依存度に関する方法論に関する評価」。2026年2月に英国マンチェスターで開かれたIPBES第12回総会で、政策決定者向け要約が承認されました。

Q2. 自然に悪影響を与える資金と、保全に向かう資金はどれくらいですか?

要約によると、2023年に自然に直接の悪影響を与える公的・民間の資金は7.3兆ドルと推計されています。内訳は民間の資金が約3分の2の4.9兆ドル、環境に有害な公的補助金が2.4兆ドルです。保全と持続可能な利用に貢献する活動に向かった資金は約2,200億ドルでした(KM2)。

Q3. 中小企業でも影響と依存を測れますか?

要約は、方法によって必要な専門知識・資源・費用が異なり、中小企業にはとくに課題になると述べています。そのうえで、制約を認めつつ方法を使い始め、時間をかけて能力を高めていけるとしています(KM7)。

Q4. 要約は日本語で読めますか?

2026年10月12日時点で、政策決定者向け要約の日本語版は確認できていません。このページの主要メッセージなどの日本語は、英語の最終版からの当法人訳です。

出典台帳

資料発行日付URL取得日
生物多様性及び自然の寄与に係るビジネスの影響と依存度に関する方法論に関する評価(ビジネスと生物多様性アセスメント) 政策決定者向け要約(英語・最終版)IPBES2026-06-16(Zenodo公開)https://doi.org/10.5281/zenodo.207148902026-10-12
ビジネスと生物多様性アセスメントのページIPBES2026https://www.ipbes.net/business-impact2026-10-12
IPBES総会第12回会合(IPBES12)の結果について(報道発表)環境省2026-02-19https://www.env.go.jp/press/press_02895.html2026-10-12

このページで扱っていないこと

行動の全一覧(表SPM.1・表SPM.2)の個々の項目、方法の適用可能性の全表(表SPM.3)、要約の背景メッセージ(A〜C)、各章の内容は扱っていません。一次資料で確認できなかった数値は載せていません。日本語は当法人訳で、英語の最終版が優先されます。

このページについて

作成:小嶋宏明(NPO法人唐津Farm&Food 副理事)/お問い合わせ:info@karatsu-f-f.com(お問い合わせフォーム)/公開:2026年10月12日/Markdown版:ipbes-business.md

関連リンク

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