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IPBESネクサス評価のまとめ
生物多様性・水・食料・健康・気候変動

刈り取り後の田畑と山並み、青空
評価された対策7110の分類にまとめて評価
評価した要素5生物多様性・水・食料・健康・気候変動
作成165名の専門家・6,500の文献

生物多様性・水・食料・健康・気候変動は、どうつながっているのか

IPBES(生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム)のネクサス評価は、生物多様性・水・食料・健康・気候変動の5つの要素のつながりを評価し、2024年12月に政策決定者向け要約が承認されました。71の対策が5つの要素に与える影響を評価し、そのうち43の対策は5つの要素すべてにプラスの評価です。ほかの要素を考慮せず一つの要素の目標だけを優先するシナリオでは、ネクサス全体でトレードオフが生じるとしています。

このページは、NPO法人唐津Farm&Foodが、ネクサス評価の政策決定者向け要約(SPM)の主要メッセージと、71の対策の評価表(図SPM.8)を日本語で整理したものです。評価の言葉は付けず、要約に書かれていることだけを記しています。出典はすべて下の出典台帳でたどれます。

IPBESネクサス評価とは

正式な名前は「生物多様性、水、食料及び健康の間の相互関係に関するテーマ別評価報告書」です。政策決定者向け要約は、2024年12月10日から16日にナミビアのウィントフックで開かれたIPBES第11回総会で承認され、各章が受理されました。世界のすべての地域から選ばれた165名の専門家が、70名を超える寄稿者の支援を受け、6,500の文献と先住民・地域の知識をもとにまとめています。

政策決定者向け要約の英語の最終版は、2025年6月16日にZenodoで公開されました(DOI 10.5281/zenodo.13850289)。日本語版は環境省とIGESが翻訳し、ZenodoとIGESのサイトで公開されています。このページの数字は英語の最終版で確認し、対策の名前や分類の名前は日本語版の訳語にそろえています。

区分要約に書かれていること番号
A 過去と現在評価したすべての指標で、生物多様性は過去30〜50年のあいだ10年あたり2〜6%減っているKM-A1
生物多様性やほかの要素に損失を与える活動に、年7兆ドルが投資されているKM-A3
世界人口の半分以上が、生物多様性・水・食料安全保障の低下や、健康リスク・気候変動の悪影響が最も大きい地域に住んでいるKM-A3
B 将来生物多様性の損失への対応を10年遅らせると(例:2021年から2030年へ)、費用は2倍になるKM-B1
気候変動への対応が遅れると、少なくとも年5,000億ドルが上乗せされるKM-B1
ほかの要素を考慮せず、一つの要素の目標だけを優先するシナリオでは、ネクサス全体でトレードオフが生じるKM-B1
C 対策71の対策を詳しく評価し、10の分類にまとめたKM-C1
71の対策を合わせると、SDGsの17の目標すべて、昆明・モントリオール生物多様性枠組の23のターゲットすべて、パリ協定の緩和・適応の長期目標の達成を支えるKM-C3
24の対策は、それぞれ5つを超えるSDGsの目標と、5つを超える同枠組のターゲットを前進させるKM-C3
D 統治と資金生物多様性に必要な資金の不足は年0.3兆〜1兆ドル。水・食料・健康・気候変動に直接かかわるSDGsには、さらに少なくとも年4兆ドルの投資が必要KM-D2
政策決定者向け要約の主要メッセージ(Key Messages)から、数字を含む記述を抜き出したもの。番号は要約の主要メッセージの番号。出典:IPBES (2024) 政策決定者向け要約 最終版

4つの主要メッセージ

要約の主要メッセージは、A(過去と現在)、B(将来)、C(対策)、D(統治と資金)の4つに分かれています。Aでは、評価したすべての指標で、生物多様性が過去30〜50年のあいだ10年あたり2〜6%減っていることが示されています。Bでは、生物多様性の損失への対応を10年遅らせると費用が2倍になり、気候変動への対応の遅れは少なくとも年5,000億ドルを上乗せするとしています。

Cでは71の対策を評価し、Dでは資金の不足を示しています。生物多様性に必要な資金の不足は年0.3兆〜1兆ドルで、水・食料・健康・気候変動に直接かかわるSDGsには、さらに少なくとも年4兆ドルの投資が必要とされています。

71の対策と10の分類

71の対策は、生態系の保全、生態系再生、生態系管理、持続可能な消費、汚染の削減、統合的な計画とガバナンス、リスク管理、権利と衡平性の確保、ファイナンスの整合化、その他の10の分類にまとめられています(KM-C1)。

要約は、5つの要素すべてに便益の可能性がある例として、統合的なランドスケープ・シースケープの管理、農業の水利用効率化、持続可能で健康的な食事、人獣共通感染症予防のための生物多様性管理、持続可能なバイオエコノミー、森林・土壌・湿地・泥炭地・マングローブなど気候変動の緩和と適応に役立つ生態系の再生を挙げています。一方で、ある要素から始まった対策が、注意深く実施しないとほかの要素に想定外の悪影響を及ぼす可能性がある例として、洋上風力とダムの運用を挙げています(KM-C1)。

分類記号対策生物多様性水食料健康気候変動
生態系の保全B01空間的保全+大+小+小+中+中
F01生態学的完全性の高い原生自然生態系の改変防止+大+大+小+中+大
H10健康のための森林保全+大+大+中+大+大
生態系再生B05森林ランドスケープの再生+大+大+小+中+大
B06沿岸・海洋生態系の再生+中+中+小IC/NE+中
B07陸水生態系の再生+小+中+小+中+中
B08再野生化+大+大-小+小+大
F02土壌の健全性の回復+大+大+大+中+大
H08健康のためのマングローブ林の保全と再生+大+大+大+大+中
C04湿地の保全と再生+大+大+小影響なし+中
C13炭素隔離のための沿岸海洋生態系の再生+大+中+大+小+大
生態系管理B03/C11アグロエコロジー*+中+大+中+小+大
W05持続可能な内水面漁業+中+中+大+中+大
W11外来種の管理+大+小+小+小-小
F04農地の生態学的集約化+中+中+中+小+大
F05放牧地の生態学的集約化+大+小+小+小+中
F06水産の生態学的集約化+小-中+大+小+大
C01土壌有機炭素蓄積+大+大+大+中+大
C03多栄養段階統合養殖影響なし影響なし+中+小+中
C12森林を活用した気候変動対策+小+小-小+中+大
持続可能な消費W04農業の水利用効率化+中+大+小+中+中
F10食料ロスと廃棄の削減+小+小+中+小+中
F11/C15持続可能で健康的な食事*+中影響なし+小+中+大
H04薬用植物の持続可能な利用+中+小+小+中+小
H06肉の過剰消費の抑制+大影響なし+中+中+中
C05洋上風力発電-小-小-小-小+小
C06陸上太陽光発電-小+中影響なし+中+大
C07持続可能なバイオエコノミー+中+中+中+中+大
汚染の削減W12廃水管理+中+中+中+中+中
F07栄養塩汚染の削減+大+小影響なし+小影響なし
F08農薬汚染の削減+中+小+中+中影響なし
F09プラスチック汚染の削減IC+小+小+小+小
H07汚染防止+中+大+中+中+中
C02/F03持続可能な集約化*+小+小+大+中+大
C08短寿命気候汚染物質の削減影響なしNE+小+中+小
統合的な計画とガバナンスB09統合的ランドスケープ・シースケープアプローチ+大+大+大+中+大
B12土地・海洋計画+小+小+小+中+小
W02統合的水インフラ+小+中+中+小+中
W08越境水協力+中+中+中NE+中
W09地下水ガバナンス+中+小+中+中+中
W13水循環に配慮した都市インフラ影響なし+中+中+中+中
W15コミュニティによる水管理+中+中+中+中+中
F12都市域の食料システム影響なし-小+小+中+小
H12統合的流域保健対策+大+大+中+中+小
リスク管理B02/C14都市における自然を活用した解決策*+大+中+小+中+中
B04農山漁村地域における生態系を活用した適応策+大+中+中+小+大
W03ダムの運用影響なし+小-小-小-中
H03ネットゼロの持続可能な医療+大+中+中+大+大
H09都市のグリーンインフラ+大+大+小+中+中
H11人獣共通感染症予防のための生物多様性管理+大+大+大+大+中
H13健康影響評価+中+大+大+大+中
H14ワン・ヘルス・アプローチ+中+中+中+大+小
C09マルチハザード早期警戒システム+中+大+大+大+中
権利と衡平性の確保B10権利に基づくアプローチ+中+中+中+中+中
W01包摂的な水教育ICIC+中+小IC
W06包摂的な水管理+小+小NENENE
W07自然の権利IC+中IC+小IC
W14水汲み労働のジェンダー差への対応NE+中+中+中+小
F14ジェンダーに関する変革的アプローチの育成+小+中+小+中+小
F15先住民の食料システム+大+中+大+大+中
F16自然資源と土地へのアクセス+小+中+小+小+中
H01ユニバーサル・ヘルス・カバレッジIC/NE+小+小+大+中
H02異文化をまたぐ保健医療サービスIC/NENE+中+中NE
ファイナンスの整合化B13自然資本会計+大+中影響なし+小+中
W10水インフラのファイナンス影響なし+小+小+中影響なし
F13公共支出の改革+中+小+中+中+小
C10国際資金・技術協力+大+大+大+中+大
その他B11多国間環境協定+中+小+小+小+中
B14人々と自然とのつながりの回復+小+小+小+中+小
H05自然の処方影響なし影響なし+小+中+小
H15統合的保健教育+小+小+中+中+小
図SPM.8の全71行。各要素への影響を-3〜+3で評価した平均点を、プラス(+)・マイナス(-)と3段階の大きさで示しています。大=2.5以上、中=1.5以上2.5未満、小=0より大きく1.5未満(マイナスも同じ幅)。「影響なし」は図の横棒、IC=検証不足、NE=根拠なし。*の4つの対策は2つの小章で評価され、2つの平均です。図は円の大きさと色で示しているため、このページでは図のデータから大きさと色を読み取って表にしました。出典:IPBES (2024) 政策決定者向け要約 最終版、Figure SPM.8(最終版PDFの38ページ)。対策と分類の名前は日本語版の図SPM.8による

71の対策の評価表(図SPM.8)

図SPM.8では、71の対策のうち43の対策が、5つの要素すべてにプラスの評価です。どれかの要素にマイナスの評価がある対策は8つで、再野生化(B08)、外来種の管理(W11)、水産の生態学的集約化(F06)、森林を活用した気候変動対策(C12)、洋上風力発電(C05)、陸上太陽光発電(C06)、都市域の食料システム(F12)、ダムの運用(W03)です。IC(検証不足)やNE(根拠なし)を含む対策は10あり、多くは権利と衡平性の確保の分類です。

洋上風力発電・陸上太陽光発電・ダムの運用については、国内の制度や唐津市沖の状況とあわせて、IPBESネクサス評価で見る再生可能エネルギーと自然で整理しています。

よくあるご質問(FAQ)

Q1. IPBESネクサス評価とは何ですか?

生物多様性・水・食料・健康・気候変動の5つの要素のつながりを評価した、IPBESの評価報告書です。正式な名前は「生物多様性、水、食料及び健康の間の相互関係に関するテーマ別評価報告書」で、2024年12月のIPBES第11回総会で政策決定者向け要約が承認されました。

Q2. 71の対策のうち、マイナスの評価がある対策はどれですか?

図SPM.8で、5つの要素のどれかにマイナスの評価がある対策は8つです。再野生化(B08)、外来種の管理(W11)、水産の生態学的集約化(F06)、森林を活用した気候変動対策(C12)、洋上風力発電(C05)、陸上太陽光発電(C06)、都市域の食料システム(F12)、ダムの運用(W03)。

Q3. 表のICとNEは何ですか?

日本語版の訳語で、ICは「検証不足」(根拠が決定的でない)、NEは「根拠なし」(根拠が見つからない)です。IC/NEは、項目によって検証不足と根拠なしが混ざっていることを示します。

Q4. ネクサス評価は日本語で読めますか?

政策決定者向け要約の日本語版(翻訳:環境省、公益財団法人地球環境戦略研究機関〈IGES〉)が、ZenodoとIGESのサイトで公開されています。英語版と食い違う場合は英語版が優先されます。

出典台帳

資料発行日付URL取得日
生物多様性、水、食料及び健康の間の相互関係に関するテーマ別評価報告書 政策決定者向け要約(英語・最終版)IPBES2025-06-16(Zenodo公開)https://doi.org/10.5281/zenodo.138502892026-10-12
同 政策決定者向け要約 日本語版(翻訳:環境省、IGES)IPBES2026-01-09(Zenodo公開)https://zenodo.org/records/181961742026-10-12
同 日本語版の掲載ページIGES2026-02-12https://www.iges.or.jp/jp/pub/ipbes-nexus-jp/ja2026-10-12
ネクサス評価のページIPBES2024-12https://www.ipbes.net/nexus-assessment2026-10-12

このページで扱っていないこと

要約の本文(背景メッセージ)の個々の記述、シナリオ分析の図、各章の内容は扱っていません。一次資料で確認できなかった数値は載せていません。日本語版と英語版の表現に違いがある箇所は、英語版にそろえています。

このページについて

作成:小嶋宏明(NPO法人唐津Farm&Food 副理事)/お問い合わせ:info@karatsu-f-f.com(お問い合わせフォーム)/公開:2026年10月12日

関連リンク

▶ Karatsu Data Bank(唐津データバンク)
▶ IPBESネクサス評価で見る再生可能エネルギーと自然
▶ IPBES Nexus Assessment(英語)
▶ IPBES Nexus Assessment: Summary and All 71 Response Options (English)