対馬と唐津をつなぐ、海洋プラスチック問題へのフロントライン
長崎県対馬は、日本のなかでも海洋プラスチックごみの漂着量が非常に多い場所として知られています。 その対馬の海は、対馬暖流を通じて唐津の海ともつながっており、対馬の問題は唐津の問題でもあります。
NPO法人 唐津Farm&Food は、九州探検隊(博多大丸)、対馬市、金沢美術工芸大学、SARAYA株式会社、ZERI JAPAN など多様なパートナーと連携し、 海洋プラスチック問題に「デザイン」と「共創」で向き合う取り組みを進めてきました。
このページでは、対馬での視察・アートプロジェクト・ワークショップ・万博での発信など、 海洋プラスチック問題に向き合う取り組みの全体像をまとめて紹介します。
WAVE PROJECT 視察(対馬)|海ごみをアートで可視化する
8月27日・28日、唐津Farm&Foodは九州探検隊が進める WAVE PROJECT(Waste Art Visualizes Environment) に参加し、 対馬の海岸やクリーンセンターを視察しました。
対馬市役所 OCEAN GOOD ART の久保さんの案内のもと、対馬のビーチに漂着したごみや、 アートやアップサイクルに活かせるプラスチック素材を調査。
対馬と唐津の海の問題はつながっており、対馬の海ごみを解決しなければ唐津でも解決は難しい―― その現実を、現場で改めて実感する視察となりました。
EXPO 2025 大阪・関西万博「BLUE OCEAN DOME」対馬ウィーク
2025年6月、唐津Farm&Foodは大阪・関西万博の海洋パビリオン 「BLUE OCEAN DOME」 で開催された 「Tsushima Week(対馬ウィーク)」に参加しました。
対馬で回収されたペットボトルキャップをアップサイクルした 「波絵馬(なみえま)」 の制作・展示や、 海洋プラスチック問題に向き合うトークセッション「おとーしゃと波の想い」、 Precious Plastic のマシンを使ったワークショップなどを実施。 対馬と唐津、そして世界の来場者を「海の課題」でつなぐ時間となりました。
対馬やまねこ空港「対馬ウィーク再現展示」
万博で話題となった約200枚の波絵馬は、その後 対馬やまねこ空港 に再集結し、 「対馬ウィーク再現展示」として空港を訪れる人々を迎えました。
会場には、対馬の海の神様「おとーしゃ」の実物大模型や、万博会場限定スタンプなども並び、 万博に行くことができなかった方々も、対馬の海に向けられたたくさんの“願い”と“想い”を体感できる空間となりました。
展示期間中も、波絵馬やおとーしゃをきっかけに海洋プラスチック問題についての対話が生まれ続けています。
対馬の想い、世界へ――波絵馬づくりワークショップ
万博開幕にあわせて、対馬市交流センターでは「波絵馬づくりワークショップ」を開催。 子どもから大人まで約80名が参加し、対馬の海への願いを込めた波絵馬が次々と生まれました。
材料は、対馬の海岸や生活から回収されたペットボトルキャップ。 それを洗浄・細断し、プレシャスプラスチックの射出成型機で、金沢美術工芸大学がデザインした絵馬型にアップサイクルしました。
当日は、SARAYA株式会社の公式キャラクター「ヤシボー」も登場し、会場は笑顔でいっぱいに。 完成した絵馬は、のちに BLUE OCEAN DOME「対馬ウィーク」で展示され、対馬の島民の想いを世界に届けました。
ツシマウラボシシジミのオーナメントづくりとクリスマスツリー
Precious Plastic 唐津は、九州探検隊(Precious Plastic Kyushu)、対馬高校ユネスコ部、対馬市SDGs推進課、 プレシャスプラスチック対馬と協力し、絶滅危惧種 ツシマウラボシシジミ をモチーフにした クリスマスオーナメントを制作しました。
オーナメントには、対馬の海岸に流れ着いた発泡スチロールやペットボトルキャップ、流木などをアップサイクルした素材を使用。 「変容」と「共生」の象徴である蝶をテーマに、美しい地球と豊かな生物多様性を守りたいというメッセージを込めました。
作品は、大丸福岡天神店のクリスマスイルミネーションとして展示され、 多くの来場者に対馬の自然と海洋プラスチック問題を伝えるきっかけとなりました。
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2024年大丸福岡天神店クリスマス点灯式 〜Change 未来に向けて私たちができること〜
▶ ツシマウラボシシジミのノベルティーについてはこちら
対馬SDGsパートナーズとしての連携
NPO法人 唐津Farm&Foodは、対馬市の 「対馬SDGsパートナーズ」 に登録されています。 対馬市と博多大丸とのSDGs連携協定をきっかけに始まったご縁から、 海洋プラスチック問題を中心に、さまざまなイベントやワークショップで共に活動してきました。
日本で最も海洋プラスチックが漂着する場所の一つである対馬。 そこでの課題に向き合うことは、九州全域、そして日本全体の持続可能な未来を考えることにもつながります。
金沢美術工芸大学×SARAYA×対馬プロジェクト
対馬のクジカ浜でのペットボトルキャップ採取、対馬クリーンセンター中部中継所での海ごみタイルアート制作、 プレシャスプラスチックのマシンを使ったアップサイクル実習などを通じて、 金沢美術工芸大学の学生たちは「海洋プラ問題にみんなで向き合うデザイン」を探求してきました。
振り返りワークショップでは、対馬市SDGs推進課・奈良県生駒市SDGs推進課とも連携し、 対馬の未来を描く新しいアイデアが次々と提案されました。 万博での BLUE OCEAN DOME の取り組みも、このプロセスの先にあります。
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金沢美術工芸大学×サラヤ×対馬プロジェクトに参加し、対馬でのアップサイクル活動の現地指導
▶ プラスチックアップサイクル、海洋プラスチック問題についてはこちら
対馬青年の家 フラワーポット作りワークショップ & SDGsカフェ
2024年2月、対馬青年の家では、対馬SDGs推進課・九州探検隊・Precious Plastic 唐津が協力し、 ペットボトルキャップを使ったフラワーポットづくりやキーホルダーづくりのワークショップを開催しました。
午後には、MITsがファシリテーターを務める 「SDGsカフェ」 を実施。 「対馬のプラスチックごみを価値ある資源に変えるには?」をテーマに、 シートプレス技術を活用した家具・アートづくりなど、さまざまなアイデアが生まれました。
対馬市鶏知中学校 アップサイクルワークショップ
2024年2月16日、対馬市鶏知中学校の3年生を対象に、 対馬市SDGs推進課・九州探検隊と共にアップサイクルワークショップを実施しました。
対馬で回収されたペットボトルキャップを素材に、ツシマヤマネコをモチーフにしたキーホルダーを制作。 生徒たちは、ただ「ごみを拾う」のではなく、「ごみを資源に変える」という発想を体験を通じて学びました。
大丸福岡天神店 クリスマスツリー点灯式との連携
2023年11月には、大丸福岡天神店パサージュ広場で開催された 「クリスマスツリー点灯式~未来へ繋げる誰かと繋がる~」に参加しました。
日本各地、そして海外のプレシャスプラスチックの仲間たちと協力して制作したフラワーポットのオーナメントは、 対馬の海岸をはじめ、各地の廃プラスチック・海洋プラごみの“循環”の象徴となりました。
対馬市の比田勝市長やSDGs推進課の皆さんとも一緒に点灯ボタンを押し、 「海洋プラスチックを減らし、循環させる」という共通の想いを発信しました。
アースデイ!海ゴミアートプロジェクト in 対馬
2023年4月には、対馬市立西部中学校や対馬高等学校、対馬SDGs劇団、市民有志、対馬市、 株式会社日比谷花壇、Precious Plastic Kyushu/Karatsu と連携し、 「アースデイ!海ゴミアートプロジェクト in 対馬」 を実施しました。
対馬中部中継所(クリーンセンター)で粉砕した海洋プラスチックをタイル状に成形し、 渡り鳥・ヤマショウビンをモチーフにした大きなウォールアートを制作。 「アースデイに、私たちの愛する海を守りたい」というメッセージを世界に向けて発信しました。
これからの「海洋プラスチック問題」
対馬の海洋プラスチック問題を、「対馬だけの課題」ではなく、 唐津や九州、そして世界ともつながる共通の課題として捉えていきます。
アートやデザイン、アップサイクル、ESD(持続可能な開発のための教育)を通じて、 海洋プラスチック問題にみんなで向き合うための「きっかけ」と「場」を、 これからも育て、広げていきます。