リジェネラティブとは
NPO法人唐津Farm&Foodは、佐賀県唐津市相知町の横枕地区で、令和5年度後期に佐賀県で初めて環境省の自然共生サイトに認定された里山の保全に取り組んでいます。このページでは、横枕をリジェネラティブ(環境再生)の現場として紹介します。
リジェネラティブ(Regenerative/再生型)とは、環境への負荷を減らしてゼロに近づけるだけでなく、その土地の生態系と、そこに暮らす人の営みが回復していく方向へ、事業や暮らしを組み直す考え方です。建築家のビル・リードは2007年の論文で、環境に配慮した設計を「被害を抑える」「負荷をゼロにする(グリーン、サステナブル)」「回復させる(リストレーティブ)」「再生する(リジェネラティブ)」の段階に整理しました(出典:Bill Reed, "Shifting from 'sustainability' to regeneration", Building Research & Information, 2007)。サステナブルが「これ以上悪くしない」ことだとすれば、リジェネラティブは「元の力を取り戻していく」ことです。
エレン・マッカーサー財団が示すサーキュラーエコノミーの3原則も、3つめは「自然を再生する」です。当法人は、資源を循環させる側をPrecious Plastic 唐津のサーキュラーデザインとして、自然を再生する側を横枕の自然共生サイトとして、それぞれ唐津の現場で続けています。
横枕という現場:水田と竹林と井堰の里山
佐賀県で初めての自然共生サイト
横枕は、森林(人工林・竹林)と水田、そして一級河川の厳木川にかかる井堰からなる里山です。令和5年度後期に佐賀県で初めて環境省の自然共生サイトに認定され、2025年度第1回に地域生物多様性増進法にもとづく認定へ移行しました。認定された価値は、里地里山に代表される二次的自然の生態系、地域の伝統行事を支えてきた自然資源の供給の場、希少な動植物が生息・生育する場の3つです。国際データベースProtected Planet にも、OECM(保護地域以外で生物多様性保全に資する地域)として登録されています(ID 555781451)。
一方で、横枕の住民は約90人、平均年齢は約70歳です。イノシシなどの獣害、田んぼの担い手不足、水田に増える外来の貝。守るだけでは、里山は続きません。自然と地域の暮らしの両方が回復していく仕組みを、ここで組み立てています。
約200年、地域を潤してきた井堰
横枕の田んぼを潤す井堰は、約200年前、天明の飢饉のころに大庄屋の松隈利右衛門が24年をかけて築いたと記録されています(出典:環境省 自然共生サイト認定個票)。井堰の水は田んぼを潤し、田んぼはトンボや水鳥のすみかになり、川には鮎がのぼる。人が水を引き、手を入れ続けてきたことで、横枕の生きものの暮らしも保たれてきました。
水の流れで電気柵を動かす:グリーンインフラ
2026年10月7日、田んぼを潤す水路に小型水力発電機「ピコピカ10」を据え、その電気で電気柵を動かす仕組みを横枕に設置しました。独立行政法人環境再生保全機構(ERCA)地球環境基金の助成による「地域再エネ導入による獣害対策と里山保全モデル事業」です。山あいで電源をとりにくい田んぼでも、地域の水の流れを生かして獣害対策を続けられるようにするのがねらいです。
自然が持つ機能を生かして地域の課題を解くこうした取り組みを、グリーンインフラ、国際的には自然を活用した解決策(NbS:Nature-based Solutions)と呼びます。発電量や稼働の状況を記録し、設備の仕様と維持管理の手順を、ほかの集落でも使えるかたちにまとめていきます。
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測りながら、手を入れる:佐賀大学との生物調査
自然が回復しているかどうかは、測らなければわかりません。横枕は、環境省の令和8年度 生物多様性保全推進支援事業に採択され、佐賀大学と連携して生物調査を進めています。2026年8月7日の1回目では、生きものの通り道に赤外線センサーカメラを設置しました。10月4日の2回目は、年に一度、井堰の水を落とす「井堰まつり」の日に合わせ、ふだん水に沈んでいる井堰の中で水生生物を調べました。
地域の行事と調査を重ね、住民・高校生・大学生が続けられる調査のかたちをつくること。調べた結果を次の手入れに生かしていくことが、横枕のリジェネラティブの土台です。
人が手を入れることで保たれる自然
横枕では毎年1月、竹を切り出して鬼火焚きを行います。竹を切ることが竹林の手入れになり、2026年は焚いた竹を炭にして畑へ還す試みも始めました。田植え、草刈り、井堰の手入れ。地域の暮らしの営みそのものが、里山の生態系を支えてきました。
リジェネラティブは、新しい技術だけの話ではありません。こうした営みを、今の担い手と、外から関わる人たちとでつなぎ直していくことでもあります。
旅で関わる:リジェネラティブツーリズム
リジェネラティブツーリズム(再生型観光)は、環境や地域への負荷を減らすだけでなく、旅を通じて訪れた土地の自然や暮らしを再生していく観光です。横枕では、訪れた人が景色を眺めて帰るのではなく、田植えや収穫、竹林や水路の手入れなど、里山を支える作業に地域の方と一緒に加わります。
これまでに、九州大学の学生とのリジェネラティブツーリズムや、農作業・里山の手入れに参加するボランティアの受け入れを行ってきました。2026年5月には、フランスからのボランティアが横枕に滞在しています。滞在と作業を組み合わせた受け入れや、旅行会社・観光事業者のみなさまからの企画のご相談もお受けしています。
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世界の環境再生のネットワークとつながる
横枕は、世界的な生態系再生のネットワーク「ERC(Ecosystem Restoration Communities/生態系再生コミュニティ)」の、日本で最初のコミュニティです。2026年5月にはフランスからのボランティアが横枕に滞在し、生きもの調査やフジバカマの植え付け、田んぼの籾まきを地域のみなさんと一緒に行いました。小さな里山が、世界の環境再生の現場と直接つながっています。
企業・団体のみなさまへ:環境再生の現場での研修・視察
横枕には、行政・企業・大学・海外から、人が学びに訪れています。2024年9月20日には、環境省・国土交通省に続き、企業として初めてパタゴニアの方が横枕を視察されました。
自然資本や生物多様性を、自社の事業とつなげて考えたい企業・団体のみなさまに、横枕での視察・研修・フィールドワークをご案内しています。サステナビリティ推進や新規事業の担当者の研修、社員研修、人材育成の場として、自然共生サイトの現場で、体を動かしながら学ぶ時間をつくります。
里山の手入れや生物調査への参加、小型水力発電と電気柵の見学、地域の方との対話など、目的と人数に合わせて内容を組み立てます。日程・内容・費用は、個別にご相談ください。
よくあるご質問
Q1. リジェネラティブとサステナブルの違いは?
サステナブルが「環境への負荷を減らし、これ以上悪くしない」ことを目指すのに対し、リジェネラティブ(環境再生)は、その土地の生態系と地域の営みが回復していく方向へ、事業や暮らしを組み直すことを目指します。建築家のビル・リードは2007年の論文で、環境に配慮した設計を「被害を抑える」「負荷をゼロにする」「回復させる」「再生する」の段階で整理しています。
Q2. 横枕の自然共生サイトで、企業の研修や視察はできますか?
はい。里山の手入れや生物調査への参加、小型水力発電と電気柵の見学、地域の方との対話など、目的と人数に合わせて内容を組み立てます。日程・内容・費用は個別にご相談ください。お問い合わせフォームから受け付けています。
Q3. 横枕の自然共生サイトはどこにありますか?
佐賀県唐津市相知町の横枕地区です。森林(人工林・竹林)と水田、厳木川の井堰からなる里山で、令和5年度後期に佐賀県で初めて環境省の自然共生サイトに認定され、2025年度第1回に地域生物多様性増進法の認定へ移行しました。
Q4. 横枕でリジェネラティブツーリズムはできますか?
はい。田植えや収穫、竹林や水路の手入れなど、里山を支える作業に地域の方と一緒に加わる形で受け入れています。九州大学の学生とのリジェネラティブツーリズムや、国内外からのボランティアの受け入れを行ってきました。受け入れられる日は農作業の時期によって変わるため、日程・内容・費用は個別にご相談ください。
In English: Regenerative × Nature Coexistence Site
Regenerative design goes beyond reducing harm to zero: it reorganises a business or a way of life so that the local ecosystem and the community living with it recover their strength. Bill Reed (2007) described a path from limiting damage, to neutral (green and sustainable), to restorative, and finally regenerative design. In Yokomakura, Aikimachi, Karatsu, Saga Prefecture, Karatsu Farm & Food looks after a satoyama of forest, bamboo groves, rice paddies and a weir about 200 years old. It became the first Nature Coexistence Site in Saga Prefecture certified by Japan's Ministry of the Environment (second half of FY2023) and is registered on Protected Planet as an OECM (ID 555781451). On 7 October 2026 we installed a small hydropower generator in an irrigation channel to power an electric fence against wild boar, and with Saga University we survey the site's wildlife to see whether nature is actually recovering. Yokomakura is also the first Ecosystem Restoration Community (ERC) in Japan. As regenerative tourism, visitors join the work that keeps the satoyama alive, such as rice planting, harvesting and caring for bamboo groves and water channels; we have hosted students from Kyushu University and volunteers from Japan and abroad. We welcome companies, universities and organisations for site visits, training and fieldwork. Read more in English.
視察・研修のご相談
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関連リンク
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