Precious Plastic Karatsu

サーキュラーデザイン × ESD
捨てて終わらせない、循環の設計

廃ペットボトルキャップから成形されたマーブル模様のクジラキーホルダー。Precious Plastic 唐津のサーキュラーデザイン

サーキュラーデザインとは

サーキュラーデザイン(Circular Design/循環デザイン)は、製品やサービスを企画・設計する段階から、廃棄物や汚染を生み出さないことを前提にする設計思想です。エレン・マッカーサー財団は、その原則を3つ挙げています。

  1. 廃棄物と汚染を出さない
  2. 製品と素材を、いちばん価値の高い状態のまま循環させる
  3. 自然を再生する。

製品が環境に与える負荷の大半は、設計の段階で決まります。3R(リデュース・リユース・リサイクル)が「ごみが出たあとにどう対処するか」の話だとすれば、サーキュラーデザインは、そもそも「ごみ」という状態をつくらないところから考えます。

ネイチャーポジティブ経済
生物多様性の損失を減らし、回復させる行動の内訳 出典:地球規模生物多様性概況第5版(GBO5)(2020)

3つめの原則「自然を再生する」が示すとおり、ネイチャーポジティブとサーキュラーエコノミーは、別々の目標ではありません。生物多様性の損失を止めて回復に向かわせる力の多くは、「消費と廃棄物の削減」「持続可能な生産」―循環の側に置かれています(出典:生物多様性条約事務局「地球規模生物多様性概況 第5版(GBO5)」2020)。私たちは循環の側を Precious Plastic 唐津として、保全と回復の側を 横枕の自然共生サイト(OECM)として、唐津の現場で同時に続けています。だから、「拾う・資源化する」だけでは海のごみは減らない、という順番の話ができます。

唐津南高校 虹の松原プロジェクトチーム
唐津南高校 虹の松原プロジェクトチームが「第12回グッドライフアワード」実行委員会特別賞 環境ひとづくり賞を受賞!

私たちのサーキュラーデザインは、サーキュラーエコノミー × ESD

先に結論を書きます。私たちのサーキュラーデザインは、製品の設計ではなく、地域の経済と社会が続いていく仕組みの設計です。仕組みをつくり、実際に動かしてみせ、その考え方を広める。そして仕組みを動かすのは人なので、サーキュラーエコノミーには必ずESD(持続可能な開発のための教育)を掛けます。これが、Precious Plastic 唐津を通して実践している、私たちのサーキュラーデザイン × ESDです。理由を、順に書きます。

海洋プラスチック
唐津の離島、加部島での漂着ゴミ、海洋プラスチック

「これからは循環の時代です」とは、書きません

数字がそう言っていないからです。世界の循環率―経済に入る物質のうち、再生された材料が占める割合―は、2018年の9.1%から、2023年に7.2%、2025年には6.9%へと下がり続けています。再生材の量は2018年以降で約2億トン増えたのに、物質消費の総量が790億トンから1,060億トン超へと、それ以上の速さで増えたからです(出典:Circularity Gap Report 2025/Circle Economy・Deloitte)。

循環は、いま消費の伸びに負けています。足りないのは技術ではなく、実際に動いている回路です。だから私たちは、循環の必要性を語る側ではなく、小さくても本当に動く回路をつくる側に立ちます。

SDGsの17の目標を自然資本・社会資本・経済の三層に置き直したウェディングケーキ・モデル。いちばん下に自然資本(生物圏・レジリエンス)、その上に社会資本、いちばん上に経済が乗る構造
SDGsの17の目標を、自然資本・社会資本・経済の三層に置き直した「ウェディングケーキ・モデル」。経済は社会の中にあり、社会は自然の中にあります(原図:ストックホルム・レジリエンス・センター)

サーキュラーエコノミーとSDGs

経済は社会の中にあり、社会は自然の中にあります。図の中央の軸は上下の両方向を指していますが、私たちが見ているのは下向きの矢印です。経済の層で入ったお金が、社会の層へ、さらに自然の層へ、本当に降りてくるか。降りてこなければ、それは循環ではありません。事業をお受けするかどうかを、私たちはこの一問で決めています。

資金が外から入ること自体は、かまいません。防ぎたいのは、素材と価値が外へ出て、お金が戻らない形です。英国のNEF(New Economics Foundation)は、地域経済をバケツに見立てて「注ぎ足すより先に、穴を塞げ(Plugging the Leaks)」と言い、入ったお金が地域内で三巡するまでを測る指標「LM3(Local Multiplier 3)」をつくりました(出典:NEF Consulting)。「この事業で、地域内に何割残るのか」。環境の言葉ではなく、調達と経営の言葉でそう問えるところに、私たちは立っています。

仕組みを回すのは、人です

ここが、ESDを掛ける理由です。仕組みは、置いただけでは動きません。機械の使い方を覚える人、なぜやるのかを自分の言葉で説明できる人、次の誰かに教える人。その人がその土地にいなければ、回路は一度動いて、止まります。機械だけを置いていっても、残るのは動かない機械です。だから私たちにとって、教育は仕組みの付属ではなく、仕組みの一部です。

行政は制度と場をつくれます。企業は事業として続けられます。そのあいだで、実際に作って、売って、回収の側に戻すところまでを通してやれるのがNPOの位置です。私たちは構想を語る側ではなく、一周を実際につないでみせる側でありたいと考えています。

そして、どこに穴が空いているかは、地域によって違います。回収の担い手がいない地域、作る技術はあるのに売り先がない地域、売れてはいるが利益が地域に落ちていない地域。だから私たちが持っていくのは決まった答えではなく、その土地の素材と、その土地の人で組み直す、この考え方そのものです。

廃ペットボトルキャップ100%から成形した、マーブル模様の植木鉢・コースター・クジラキーホルダー「The Whale」
植木鉢、コースター、The Whale。どれも回収したペットボトルキャップ100%が原料です

唐津の実践:キャップが、捨てられない物になるまで

回収も、洗浄も、細断も、成形も。ぜんぶ地域の中で

Precious Plastic 唐津のミッションは、「子どもたちがごみを拾わなくていい世界」をつくることです。原料は、家庭・海岸・学校から集まるペットボトルのキャップ。私たちとボランティア、福祉施設の方々が洗い、唐津市内のプラスチックリサイクル工場の裁断機をお借りして砕き、設計図が公開されているオープンソース・プロジェクト Precious Plastic の仕組みをもとに自分たちで組み立てた射出成形機で成形する。金型は金型メーカーに製作をお願いしています。この流れが、唐津の中で完結しています。

2020年に法人をつくってから、活動に参加してくださった方は累計25,971名、集まったペットボトルキャップは3,026kg(いずれも2026年4月時点)。はじまりは、ビーチクリーンで出会った学校が自主的にキャップを集めてくれたことでした。今では市内外の市民や企業の方が、洗ったキャップを持ってきてくださいます。

作っているのは、コースター、キーホルダー、櫛、植木鉢、ビーズブレスレット、サングラスのフレーム。どれもキャップ100%が原料で、溶けるその瞬間に決まるマーブル模様は、ひとつとして同じものがありません。残渣を出さない100%リサイクルの設計、使い終わったら回収してもう一度材料に戻せること、大量生産をしないこと、そして「環境だから」ではなく環境と関係なく選ばれるものであること。この4つを、すべての製品に課しています。

キーホルダーの仕事は、人に気づきを渡すことです。知っているつもりのプラスチックを、もう一度、見慣れないものとして目の前に置き直す。グラフィックデザイナーの原研哉氏が2000年の展覧会「RE-DESIGN ― 日常の21世紀」で示した「既知を未知にする」というリデザイン(Redesign/再設計)の考え方を、私たちは「プラスチックを海に出さず、循環させる」という設計に当てはめています。使い終わったあとも回収して材料に戻せるように製品を設計し直すこと、そして、捨てたあとのプラスチックがどこへ行くのかという、見えなくなっていた問題をもう一度見えるようにすること。この二つが、私たちのリデザインです。

「サステナブル」と名乗る前に

グリーンウォッシュの反対語は、「完璧」ではなく「正直」

実態が伴わないのに「環境にやさしい」と見せかけることを、グリーンウォッシュと呼びます。いちばん騙しやすい相手は、自分自身です。拾うだけでは海のごみは減りません。作れば電気も使います。リサイクルしたつもりが、ごみからごみを作っているだけ、ということも起こります。「いいこと」が逆に環境負荷をかけていること。それが、私たちがいちばん怖れていることです。

だから私たちは、自分たちに4つの決めごとを課しています。測った数字だけを言う(回収kg・参加人数・確認種数)。出典を、数字の隣に置く。言えないことは、言わない。作った物を、ごみにしない(2回以上循環できる設計にし、残渣を出さない)。このページの数字が、どれも「2026年4月時点」「早稲田大学側の算定式による試算」といった但し書き付きなのは、そのためです。

クリスマスのオーナメントから生まれ変わったMINIロゴのキーホルダー。MINI宮崎ショールームでの展示
オーナメントから生まれ変わったMINIロゴのキーホルダー。MINI宮崎ショールームの展示(2026年9月)

セカンドリサイクル:作った物が、もう一度素材に戻った

MINI宮崎のオーナメントが、キーホルダーになるまで

「作った物を、ごみにしない」は、設計上の約束です。その約束が実際に一周した例が、MINI宮崎との取り組みにあります。BIG LOVE PROJECTのワークショップで、参加者のみなさんは回収したペットボトルキャップを溶かしてハート型のオーナメントをつくり、一人ひとり「BIG LOVE」のメッセージを書き込みました。そのオーナメントは、クリスマスにショールームのツリーを飾りました。

クリスマスが終わったあと、MINI宮崎のみなさんからいただいたのが、「このオーナメントを、リサイクルできないでしょうか」というご相談です。お預かりしたオーナメントを砕き、もう一度溶かして、MINIロゴの金型で成形する。できあがったキーホルダーは2026年7月にMINI宮崎へお届けし、ショールームに展示されたあと、9月からはご来場プレゼントのガチャガチャで配布されています。キャップからオーナメントへ、オーナメントからキーホルダーへ。同じ素材が、二度かたちを変えました。当法人ではこれを「セカンドリサイクル」と呼んでいます。

製品がキャップのプラスチックだけで成形されているから、砕けばそのまま原料に戻ります。イベントの装飾や記念品は会期が終わると行き場を失いがちですが、使い終わったものを回収して次の企画につくり替えるところまでを、最初から計画に組み込むことができます。願いを書いた人の手を離れて、かたちを変えて、次に来た人の手に渡る。回路が動いている、とはこういうことだと考えています。

▶ Brand Keyring|MINI宮崎 セカンドリサイクルの詳細はこちら

自分たちがデザインした松モチーフの櫛「Re comb」を手にする、唐津南高校 虹ノ松原プロジェクトチームの生徒たち
デザインから成形まで、生徒自身の手で。唐津南高校 虹ノ松原プロジェクトチームの「Re comb」

教育に落とし込む:拾う → 気づく → 自分で作る

学校の探究学習が、入口になる

私たちは、普及啓発を教育に落とし込むことを選びました。日本では学校が探究学習にPrecious Plasticを積極的に取り入れてくれます。その入口を、ビーチクリーンから製品づくりまでの一周につなげています。唐津南高校 虹ノ松原プロジェクトチームとは、ビーチクリーンを気づきで終わらせず、「問題を解決するにはどうすればいいか」を授業に落とし込み、自分たちでプロダクトを開発するところまで一緒に歩いてきました。2026年8月には、生徒自身のデザインから金型を起こした松の櫛「Re comb」を、生徒の手で成形しています。離島の小学校とは、拾ったキャップを「島のかたち」のキーホルダーにするところまでつなげています。

拾う人、作る人、次に教える人が、その土地で育つ。サーキュラーエコノミーにESDを掛けるとは、こういうことです。

佐賀バルーナーズのマスコット「バルたん」をかたどったサステナブルコースター
佐賀バルーナーズ「バルたん」サステナブルコースター(2025年4月)。マスコットの3D金型を起こした応援グッズ
無印良品 唐津で開催した「循環の物語」をつくろう ワークショップ
無印良品 唐津「循環の物語」をつくろう(2025年6月)。店舗で回収したキャップを生物多様性キーホルダーにする循環ワークショップ
Brand Keyring。自動車ブランドのロゴをかたどったアップサイクル・ロゴキーホルダー
Brand Keyring|MINI宮崎 BIG LOVE PROJECT。ブランドロゴを回収材でかたどるカスタム・ノベルティ。役目を終えたオーナメントはセカンドリサイクルでキーホルダーに
ペンギンキーホルダー(ファーストペンギン)。株式会社日立アカデミー Precious Plastic Hitachi Academy
ペンギンキーホルダー|株式会社日立アカデミー(2026年1月)。コーポレートユニバーシティの研修で60体を制作し、特別仕様の射出成形機を東京へ
早稲田大学×唐津南高校のビーズワークショップで制作した海洋プラスチックのアクセサリー
海洋プラスチック ビーズブレスレット。早稲田大学 Precious Plastic Waseda・唐津南高校との協働から生まれ、SPOGOMI × UNIQLO のワークショップへ。840kg(約33,600個)のキャップの再生で、CO2削減量は約1,832kg(早稲田大学側の算定式による試算)
KARAE SHOPで取り扱いが始まったThe Whale クジラキーホルダー
The Whale。KARAE SHOP、ふるさと納税に続いて、2026年8月30日からはメルキュール佐賀唐津リゾートでも

企業・団体とのサーキュラーデザイン

ロゴやマスコットが、回収したキャップから生まれる

企業や自治体、スポーツチームとは、それぞれのブランドアイコンやマスコットを回収材でかたちにするプロダクトを、金型から起こして作っています。原料は回収したペットボトルキャップ100%で、バージン素材は使いません。ノベルティを「配って終わり」にしないために、製品は回収してもう一度材料に戻せる設計にしています。製作にあわせて、回収量・参加者数・CO2削減の試算をまとめた実施報告をお渡しし、CSR・ESG・TNFDの開示にそのまま使っていただける形にしています。カスタム製作、研修プログラム、出張ワークショップは、それぞれの目的に合わせて組み立てます。

大阪・関西万博 BLUE OCEAN DOME 対馬ウィークで、唐津から送った射出成形機を使ったPrecious Plastic 唐津のワークショップ
BLUE OCEAN DOME での Precious Plastic 唐津のワークショップ。対馬の浜に流れ着いたキャップが、誰かの願いを載せる「波絵馬」に

唐津の外で、一周を組む

大阪・関西万博 BLUE OCEAN DOME「対馬ウィーク」(2025年6月)

長崎の対馬は、日本有数の海洋プラスチックの漂着地です。2025年6月、大阪・関西万博の海の環境パビリオン「BLUE OCEAN DOME」で開かれた「対馬ウィーク」に、対馬市・金沢美術工芸大学・サラヤ株式会社によるTsushima Projectの一員として参加しました。唐津から射出成形機を会場へ送り、対馬の島民の方々や対馬の海岸で回収されたペットボトルキャップから、来場者が海の未来への願いを書き込む「波絵馬(なみえま)」を約300枚つくりました。唐津の離島――馬渡島・小川島・加唐島――の子どもたちが描いた絵馬も、一緒に並べています。素材も、拾う人も、その土地のもの。唐津の仕組みを別の土地で組み直した一例です。

廃ペットボトルキャップからアップサイクルしたマーブル模様のフラワーポット(植木鉢)。フラワーポットプロジェクト
フラワーポットプロジェクト。捨てられるはずだったキャップが、緑を育てる器になる

サーキュラーエコノミーのモデルを、国内外に広げる

唐津で動いている仕組みを、次の地域へ

Precious Plasticは、粉砕機や射出成形機の設計図がすべて公開されています。だから私たちは、機械を売るのではなく、回収から成形までの仕組みごと、その地域で組み立てることを提案できます。フラワーポットプロジェクトは、2023年に大丸福岡天神店(九州探検隊)のクリスマスイベントを機に、国内8団体・海外3団体(フランス・タイ・インドネシア)のPrecious Plasticコミュニティと一緒に始めました。キャップを植木鉢にして植物を植える体験が、サーキュラーエコノミーを実感する入口になっています。

2022年、鹿児島の沖永良部島では、観光協会からの委託で射出成形機を島の中で組み立て、「Precious Plastic Okinoerabu Island」が生まれました。2025年、広島の宮島では、SUPの事業者の方と一緒に「Precious Plastic Miyajima」を立ち上げ、唐津で手づくりした機械を届けています。回収する人、洗う人、成形する人が、その土地の人であること。このモデルを、考え方ごと国内外へ広げていくことが、私たちの仕事です。

The Whale クジラキーホルダー。廃ペットボトルキャップ100%のアップサイクル・サステナブル雑貨
唐津の離島・小川島の子どもたちが描いたクジラをかたどった「The Whale」。手にした人と一緒に、アメリカ、韓国、台湾、ドイツ、イギリス、フランス、デンマーク、オーストラリア、オランダへ渡っていきました

In English: Circular Design × ESD in Karatsu

Our circular design is not about designing a better product. It is about designing a system that keeps a local economy and community going, running it for real, and passing the idea on. Global circularity is falling, not rising, so what is missing is not technology but working loops. We add one question to the SDGs "wedding cake" model: does the money that enters at the economic layer flow down to the community and to nature? Because a loop is run by people, we always multiply circular economy by ESD (Education for Sustainable Development): people who can operate the machines, explain why, and teach the next person. In Karatsu, bottle caps collected from homes, beaches and schools are washed, shredded and injection-moulded into products entirely within the region, and schools take the process from beach cleanup to their own product. We state only what we have measured, put the source next to every number, and do not claim what we cannot. Where the loop leaks differs from place to place, so what we bring to other regions is not a machine but this way of thinking. Read more in English.

サーキュラーデザインのご相談

企業・自治体・学校向けのカスタムプロダクト、研修プログラム、出張ワークショップ、そして地域でサーキュラーエコノミーのモデルを立ち上げるための伴走まで。まずはお気軽にご相談ください。

関連リンク

▶ Precious Plastic 唐津の取り組みはこちら

▶ サーキュラーエコノミー 資源循環プロジェクト(活動レポート)はこちら

▶ プロダクト一覧はこちら

▶ 横枕 自然共生サイト(OECM)はこちら

▶ 学校との協働(ESD教育)はこちら

▶ Precious Plastic Karatsu (English)